ハイスタ全曲紹介⑤ ~ Green Acres
よくいえば常識にとらわれない、悪くいえば節操ないカバー曲の選択で、たびたび我々を驚かせるハイ・スタンダード。
本曲は60年代から70年代にかけてのアメリカで放送されていた、ホーム・ドラマの主題歌である。なぜこれをカバーしようと思ったのかとても不思議だ。メンバーがどこかで知ったこのドラマを好きだったりしたのだろうか? だとしたら現在こんな風に一大ブームになる前から海外ドラマに目をつけていたことになるわけで、先見の明がありすぎる。
ま、冗談はさておき、ちょっと原曲を聴いてみよう。
歌詞が「日本(東京)バージョン」になってちょこちょこいじられていたり、もちろんサウンドがバンド調に置き換えられていたりはするものの、割と面影は残したまま。
原曲のイメージを大切にしたカバーといえよう。そして男女のツイン・ボーカルという点まで同じである。
では、ハイスタバージョンで難波氏とのかけ合いを唄っている、この女の子は一体誰なのだろうか?
ベース/ボーカルの難波氏は二度結婚しており、90年代に結婚した最初の奥さんとはほどなく離婚している。この曲が収録されたアルバム『MAKING THE ROAD』レコーディング当時は、最初の奥さんと結婚していた頃だった。
じゃあ、その人なの?
いや、これがなぜか、その方のご友人の女性に白羽が立ち、どういうわけか歌うことになったらしいのである。
難波氏の(当時の)奥さんのお友達。つまり、おそらくは素人さん(!)、ということになるようだ。これは作品の発表直後、難波氏当人のインタビューで読んだ証言なので、間違いない情報だと思う。
筆者はてっきり、シーン界隈のの女子ヴォーカリスト……たとえばCIGARETTEMANのCHIKAKO氏やWATER CLOSETのASKA氏などが変名でゲスト・レコーディングしたのかと予想していたので、そのインタビューを読んでずいぶん面食らった覚えがある。
だって、素人さんにしては、ずいぶんサマになりすぎているではないか!
詞の内容も、舞台を日本に移し替えただけで、ほぼ原曲通り。
結婚して田舎に移住することになった嫁の悲鳴と、それを叱咤する旦那とのコミカルな喧嘩そして仲直りまでを描いた微笑ましいやり取り。
結婚を機にこの頃地元・新潟に最初の移転をした難波氏の姿と重なる。
これは完全に余談となるが、筆者は難波さんの現在の奥方とはまったく面識がないのに、最初の奥さんにはお会いしたことがある(ライブ会場で難波氏と一緒にぶらついていた)。可愛い系の美人で、とても優しい素敵な方だった。
現在難波氏はお子さんにも恵まれ、幸せな結婚生活を育まれているようで、なによりである。氏のInstagramでたまに成長の様子を見ると、自分のことにようにどこかほっとする。
それでもやはり、あの人と離婚したという話を聞いた当初は、「ああ、そっか。やさしくていい人だったのにな。残念」と、どこか寂しい気持ちになったものだ。
この曲を聴くたびに思い出す、ちょっとした個人的な余話である。