インターネット以前の世界

ブログお引越中。昔はよかったみたいな懐古話から、今はもっといいみたいな話まで

ハイスタ全曲紹介③ ~ Tinkerbell Hates Goatees

歌メロがなく、代わりにフルートが主旋律にフィーチャーされたインスト曲。

ハイスタにしては……というかパンク/メロコア系にはかなり珍しいタイプの、どこかボサノバ調ともいえる牧歌的ナンバー。

 

いかついパンクスやハードコア勢がひしめく激しい会場で演奏されるようなナンバーだとは到底思えない。だからライブではナシが前提の、アルバムにおける箸休め的な曲……かと思いきや、筆者はこの曲がプレイされた現場に立ち会ったことがある。

六本木にあった老舗クラブでのシークレット・ギグだった。

http://www.hi-standard.jp/common/img/history/setlist/00_08_17.jpg

その時のセットリスト。<TINKER>の文字が後から急遽突っ込まれたことがわかる。

 

意外と盛り下がることもなく、ライブ中盤の適度なクール・ダウン曲として機能していたようだったが(けっこう会場がぶっ壊れたりしてハラハラ心配になるライブでした)、それより強烈に覚えてるのは難波氏が指弾きでベースを弾いていたことだ。モニター・スピーカーに腰掛けて演奏する様を間近で観ることができた。

 

ベーシストには

  • ピック弾き
  • 指弾き(スラップ奏法を含む)
  • 両方を使い分ける

それぞれのタイプがいるが、難波氏が指で弾いてるのを見たのはその時が最初だった。

「あ、難波さん、ピック一辺倒の人じゃなかったんだ」と思ったのを覚えている。

 

ちなみにその時、フルーティストはいないまま演奏されたんじゃなかったかな?

 

 

ところで、この曲の作者クレジット見ると、"Goatee"と言う名前が載っている。

誰?となった人も多いだろう。

実はこれ、当時のハイスタのローディーさん。

 

フロントの二人と較べメディアやインタビューに登場することが少ない恒岡氏が、珍しく当時どこかで暴露的に話していたので、このエピソードは印象に残っている。

 

ローディー氏がある時、ギターでフレーズをつま弾いて繰いたのが耳に引っかかったのだという。

 

「それ、何?」

 

「僕の練習用フレーズですけど」

 

「いいじゃん、それ。もらうわ」

 

って感じで、そのままあれよあれよというまに『Making The Road』に収録されてしまったそうだ。

 

 

さて、Goateeとは山羊のことだが、この曲の途中で「メエエッ」とそれらしき鳴き声が入っている。前述のライブでは丁度そのタイミングで誰かが乱入し、難波氏のマイクを使って合いの手を入れていたのだが、難波氏が笑ってその様子を見てたので、おそらくスタッフの人だろうとは思っていた。

 

 今考えると、あれが噂のGoatee氏ご本人だったのかな?

 

 

後日追記:

その後他日程のセットリストを見ていて発見したのだが、赤坂ブリッツやZEPP TOKYOのライブでも演奏されているっぽい。これらのライブも観ているはずなのだが、全然記憶がない。

セットリスト上に載っているだけでやらなかったのかな……と思いきや、パーカッションの及川浩志氏が難波氏に紹介され登場した覚えだけはある。ということはやはり演奏したのだろう。うーん、覚えがない。ダイブに失敗して頭でも打っていたのだろうか。

 

ちなみに及川氏はCENTRALというサルサ・バンドのパーカッショニストである。

ひそかにAIR JAM 2000にも出演していた凄腕のセッション・ミュージシャン 。

ハイスタ全曲紹介② ~ Summer Of Love

ハイスタ初期の名曲中の名曲。
リスナー人気も非常に高い、ライブ定番曲である。

 

2分にも満たない短い曲なのだが、聴きどころはこれでもかってくらいに多数。

冒頭とんでもないリズム感を見せつけたと思いきや、そのままテンションを下げず駆け抜けるツネこと恒岡氏のドラム。キャッチーなギター・リフと、その裏で激しく絡まるベース・ライン。キラー・コーラス、ユニークな歌詞、などなど、実に様々なアイディアがあんこ過剰のたい焼きみたいにぎゅうぎゅうに詰め込まれている。

 

 

実は、この曲は発表後、マイナー・チェンジが施されている。

といっても本当に些細なものだ。具体的にはアレンジと歌詞。1番と2番の間にベースラインを際立たせるキメが入り、サビの"My love is 〜" の後には、歌詞カードにはない"just"が聴きとれるようになった。

 

筆者が確認できているところによると、このバージョンアップは1998年以降に定着したのもののようだ。その後のライブではほぼ毎回、このアレンジで演奏されている。


大人気曲だし、そのうち再録バージョンが発売されるかなと思ってのんびり待っているのだが、残念ながらというか未だにその兆しは無い。まあ、あるかもしれないし、永遠にその時は来ないかもしれない。期待せずにのんびり待とうかと思う。

 

 

ところで、歌詞の「1969年の話じゃない、この夏の話」という一節に引っかかった人がいるのではないだろうか。なぜ唐突に'69年が登場するのか? このエポックメイキングな年についても少し補足しておこう。

 

米国文化に詳しい人なら言わずもがな、実は「サマー・オブ・ラブ」とはそのままずばり、60年代のアメリカで若者を中心に湧き上がったヒッピー的な文化現象のことを指す。この時代にだけ存在したある種の特徴的な青春、それがサマー・オブ・ラブ現象だったといっていい。

 

サマー・オブ・ラブ - Wikipedia

ヒッピー - Wikipedia

 

だがこのwikiの説明によると、サマー・オブ・ラブの発祥は1967年となっている。歌詞に登場するのはその2年後。'69年はまだその風潮の真っ最中ではあるが、はたしてわざわざこの年でなければいけない理由はあるのか。

 

あるのだ。ひとつには横山健の生まれ年が正にこの1969年であること(ちなみに難波氏は一つ下だが6月9日生まれ、自身のバンド名も"NAMBA69"。だがこっちの一致は単なる偶然で、この曲とはあまり関係ないと思う)。

 

そしてもうひとつは、おそらく理由としてはこっちのほうが大きいと思うのだが、この年に今もなお語り継がれるロック・フェスティバルの巨大伝説、ウッドストックが開催された年だからである。

 

ウッドストック・フェスティバル - Wikipedia

 

神格化された夭逝のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスを大トリに迎え、開催中にはフェス内での出産まであったというこの奇跡的なフェスが、「サマー・オブ・ラブ」のひとつの象徴であったのは間違いない。実際ぼくは、今回資料で確認するまで、サマー・オブ・ラブとはイコール69年のことだと勘違いしていたくらいだ。

 

つまり、恋するロッカー&ロックンローラーにとって、その時代にすでに生まれていようがなかろうが、1969年という年には特別な青春感みたいなものがあるわけだ。

ブライアン・アダムスは"Summer of '69"というこれも青春の大名曲を書いているが、きっと他の年ではダメで、この曲の主人公が恋に落ち仲間を集めギターを練習するのは絶対に'69年の夏でなければいけなかったのだろう。

 

余談だが横山健氏はその後ソロ曲として"Summer of '99"という曲を発表している。これがブライアン・アダムスの名曲や、あるいは自身の"Summer of Love"を意識して書かれた曲なのかどうか、今のところ本人の言及からは確認できていない。 

 

Oh God, my love is like ice cream
The summer sunshine melts it away
I'm so stupid Was it a dream?
It's bitter memory Summer of Love

 

何て事だ、オレの恋はまるでアイスクリームみたいに
夏の太陽に溶かされて消えちゃった
オレはバカだった あれは夢だったのか
苦い思い出になってしまった 恋する夏の日

ハイスタ全曲紹介① ~ Maximum Overdrive

アルバム『Growing Up』の冒頭を飾るパワフルでスピーディーかつ、凄まじくエネルギッシュな一曲。

 

執拗に繰り返される冒頭のリフが印象的だが、よく聞くとひたすら同じことを繰り返しているように見えて(聞こえて)、徐々に徐々に曲自体が盛り上がっていくような工夫がなされている。
ギターのシングルノートが途中からパワーコードに移り、だんだんと厚みを増していくなど、ひそかに芸が細かい。

 

実はあまり語られないハイスタの魅力にこういったアレンジの面白さがある。

本稿ではその辺りについても適時触れていく予定である。

 

 

歌詞の内容は若者特有の爆発的なエネルギー讃歌とでも言うべき内容で、“don't care what may come of it”を「後は野となれ山となれ」と訳するセンスが光る。


余談ではあるが、DVD『ATTACK FROM THE FAR EAST』の最後を締める(エンディングロール曲は除く)のがこの曲のライブ映像であり、そこに大熱狂観客群の中でもみくちゃにされている様子がバッチリ映っているのが、銀杏BOYZの峯田和伸(ミネタカズノブ、ex.GOlNG STEADY)である。

www.youtube.com

このエピソードは以前から峯田氏のブログや、それを書籍化した著書『恋と退屈』の中で語られていたが、2016年ダウンタウン司会のテレビ番組『ヘイヘイネオ』の中で証拠動画付きで紹介され、さらに有名になった。

 

未見の方でお暇がある方は、懐かしのゲーム『ウォーリーを探せ!』感覚で、DVDの中の峯田氏を探してみてはいかがだろうか。

 

You can do everything now
With Maximum Overdrive 

 

今のオマエならなんでもできる

ただ自分で気づいていないだけさ